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彼女②

 

ある日の夜、寝る前のことだった。妹は私の服を見て言った。
「メアリー。パジャマに土がついている」
 妹の顔は青ざめていた。
「あなただったの」
 妹は私を置いて部屋を出て行った。

妹は両親に「花をあげたのはメアリーだ」と伝えに行ったのだろうか。

私は妹の人形に見つめられて動けなくなっていた。

こんな時に、どうして金縛りになってしまったのだろうか。

必死に手足を動かそうとしても、動かすことは出来なかった。

妹の人形は生きているような微笑みと美しく輝く瞳で私を見つめている。

生きているように微笑んでいるのに、そこには全く生気を感じず、ただ不気味な何かを感じた。

私ははやくその場から逃げだしたくてたまらなかった。
 人形が私を見つめる。私は動けなくなる。

 

 金縛りを解いてくれたのは妹ではなかった。

部屋に入ってきたのは両親だった。

父親が無言で私の腕をつかみ、私を家の外へ放り出した。父親は家の中に戻っていき、私は家の外に一人にされてしまった。
これまで私を大切にしてくれなかっただけで、何もされていなかった。初めて私はこんな仕打ちを受けたのだ。
そもそも何故ここまでの仕打ちを今受けなければならないのだろうか。

私は両親にプレゼントをしていた。

両親がそれをどう思っていたかはともかく、私はただ両親に笑顔になってほしかった。それなのに、どうして私はこんな仕打ちを受けなければならないのだろうか。

 外は寒かった。私はたった今追い出された自分の家を見上げた。

家の中の所々に明りが灯っている。妹は今何をしているだろうか。戻ってこない私を心配しているだろうか。妹は優しすぎるあまり、きっと悲しんでいるに違いない。妹はきっと私が両親に花をあげていたと気づいて、それを両親に伝えたのだ。伝えた結果、両親は私を追い出す口実を見つけた。

多分両親はこれまでも私を追い出す口実を探していたのだ。
 でも、両親が嫌がっていたのに花をプレゼントしようとした私は確かに悪かったのかもしれない。

私は両親に謝らなければならないのだろうか。

そう思って私は立ちあがり、家の玄関まで歩いた。

しかし、小さな私にはインターフォンはおろかドアのノブさえ届かなかった。家を何度かノックをしたが、力の弱い私のノックは寝室にいる両親や妹には聞こえないようだった。
仕方なく私は、玄関以外の場所から家の中に入れる手段を探し始めた。

家の周りをぐるりとまわり、開いている窓を探した。

窓も私にとっては高い所にあったが、なんとか登る手段のある窓が一つだけあった。その窓のすぐ傍には大きな石と中くらいの石が二つあり、中くらいの石に私はよじ登ることが出来た。

中くらいの石に登るとそこから大きな石に上ることができ、大きな石からであれば力の弱い私でも容易に窓枠に飛び移ることが出来た。

しかし寒い夜、眠る時間に窓が開いているはずなど無かった。当然のことだが私は諦めきれず、裏口の扉が開いていないかも調べた。裏口の扉も玄関同様、私に開けることは出来なかった。

 やがて家の中の明かりが全て消えた。私は玄関の前で横になった。疲れは感じなかった。ただ寂しさだけが私を包んでいるようであった。

 家に入る場所を探している最中、私は恐ろしいものを見てしまった。窓に近づいた時、明りのぼんやりともれる窓ガラスの向こうに私はうっすらとあの妹の人形の姿を見た。

私は恐怖のあまり、すぐにその窓から離れた。確かにあの人形は私を見つめていた。目があった瞬間、私は金縛りに合ってしまい、足場から落ちてしまった。

幸い一階の窓だったので、足場と言ってもそんなに高いところではなかった。それでもあの人形がやはり、ただの人形ではない恐ろしい存在なのかもしれないと知って、私はとても怯えた。
窓の中に見えた人形の姿は、透けていたのだ。人形の後ろの風景が見えていた。そして透けた人形は私を確かに見つめていた。

夜の暗闇は容赦なく私を包む。

先程見た人形の事が頭から離れない。心では非常に怖がっていたのだが、不思議なことに私の身体は震えることなく落ち着いていた。

 

家の中では今頃妹はベッドに寝ているのだろう。妹は何を思っているのだろう。

私のことで悲しんではいないだろうか。

それだけはあって欲しくない。大好きな妹が泣くのはとても辛い。

そう思って私は改めて両親に謝り、妹の元へ戻れるようにしなければならないと思った。
玄関の前で横になりながら、私は両親の事も思い出した。

私は両親から愛情を受けた記憶がない。

妹が産まれる前までは、私は愛されていたのだろうか?

そんなことさえ信じられないと思うほど、私には愛された記憶が無かった。心が出てくるほど胸が苦しかったが、それでも涙は出てこなかった。

 

 

 手段は翌日の夕方頃になって見つかった。

母親が換気をするため石で登ることのできる窓を開けたのだ。

それまで私はずっと家の周囲をぐるぐると周っていた。不思議なことに、その日は夕方まで誰も家からは出てこなかった。訪問者も無く、私は朝から一度も玄関が開く瞬間を見ることは無かった。石を登り窓枠に飛び移ると、私は家の中に入った。


 妹は私を見つけたらどうするだろうか。優しい妹は私がいないと寂しくて泣いてしまうのではないだろうか。それでも妹に会いたくて、私は妹の部屋へ向かった。
 

妹の部屋へ向かう間、なんだか家の様子がおかしいことに気がついた。家のそこら中に段ボール箱が積まれている。また最初に入った部屋はキッチンだったのだが、食器棚の中には何も並んでいなかった。

 

「きゃああ!」


 頭の中が破裂しそうな程大きな悲鳴が聞こえた。母親だった。

私を見つけて悲鳴を上げたのだ。

母親の方を見ながらゆっくり歩く。母親は後ずさりながらガタガタと震えている。どうしてこんなに母親は怯えているのだろうか。

ああ、そうか、母親が苦手な虫でもいるのだろう。私に怯えている訳じゃない。
 母親の悲鳴を聞きつけて父親がキッチンに入ってきた。

父親も私の方を見て驚いた表情を浮かべている。父親の後ろから妹もやってきた。妹は何が何だか分からないとでも言いたげな表情をしていた。
 私は両親に謝らなきゃと思った。しかし、私が声を出そうとしても口が動かなかった。

そういえば、私はどんな声を出すのだろう?声を出したことなどあっただろうか。
 

父親が母親に駆け寄り肩を支えた。母親はガタガタ震えながら固まっている。父親が私の方を見ながら叫んだ。
「今日中に家を出る!この人形は置いて行くぞ!」
 人形?
「メアリー?」
 妹が私を見つめていた。

その表情はいつもの優しい妹の表情ではなかった。妹はガタガタ震えながら目を大きく見開いている。妹までもが、私を見ながら怯えているのだ。

妹はふらふらと私に近寄ろうとしていた。

「友里、この人形に近付いちゃだめよ!」
 母親が妹の名前を呼び、そう叫んだ。この女までもが私を人形と呼ぶのか。

どうしてよりによっても、私の大嫌いな人形なのだろうか。
 

私は父親と母親にこれまでに抱いたことないほどの怒りを感じた。何としても私は、私の妹と一緒に生きて行きたいのだ。その思いを足に込め、妹に向かって走りだした。


父親も、母親も、妹さえも、私の事を青ざめた表情で見つめていた。私以外の誰もが動くことが出来ずにじっとしていた。

それはまるで金縛りにあった自分を見ているようだった。
妹の元にたどり着いた私は、自分より身長が大きい妹を見上げた。

妹は私をじっと見つめていた。

妹の瞳には、あの妹が大切にしている人形の姿が映っていた。

 

続く





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